trialog Partnered with Sony
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VOL.2 MILLENNIALS & PHOTOGRAPHY

ヴィジョナリー・ミレニアルズ

アートフォトメディア『IMA』が見た
新しい世代の新しいクリエイティブ

2018年7月28日に開催されるtrialog vol.2「ヴィジョナリー・ミレニアルズミレニアルズ」と「写真」をキーワードとする今回は、アートフォトメディア『IMA』とコラボし国内外からさまざまなゲストを招聘する。

いま「写真」の世界には何が起きているのか? そこで「ミレニアルズ」はどのように新たな表現を生み出しているのか? IMA』エディトリアルディレクター・太田睦子へのインタビューから、写真やファッションが織りなす視覚表現の現在を紐解く。

TEXT BY SHUNTA ISHIGAMI

社会との接点を見つけ出すアーティストたち

異なる領域に属する3名が集まり「本当に欲しい未来は何か?」をテーマに議論を繰り広げる実験的な対話のプロジェクト「trialog。「融解するゲーム・物語るモーション」をテーマに開催したvol.1に引き続き、7月28日にはvol.2「ヴィジョナリー・ミレニアルズ」を開催する。

ミレニアルズ」と「写真」をキーワードに掲げる今回のtrialogは、アートフォトマガジン『IMA』とコラボレーションを実施。現在20〜30代の「ミレニアルズ」と呼ばれる世代を中心に、国内外から注目のフォトグラファーやパブリッシャーを招聘する予定だ。

2012年に創刊された『IMA』は、常に若い世代の写真家を取り上げていくことをその方針のひとつとして掲げてきた。なかでも18年夏号のVol.24では「ミレニアル世代の“イット”フォトグラファーたち」と題した特集を組み、世界各国の若き写真家たちをピックアップしている。trialogの代表を務める若林恵が本号に「シャッタード 散り散りになった私」と題したコラムを寄せたことが、今回のコラボレーションのきっかけとなったのだという。

ちょうど創刊した頃に、国内外で若手から面白い作家がまとまって登場した感がありまして、2013年に若手写真家の特集を組みました。その後も常に若い世代を取り上げたいと思ってきたんですが、ここ数年はなかなか新しい動きがありませんでした。でも、ここに来てこれまでとは文脈の異なる、新しい動きが生まれている気がしています」

そう語るのは、IMA』エディトリアルディレクターの太田睦子。太田が語るとおり、2013年夏に刊行された『IMA』Vol.4は「来るべき写真家のために」と題し、サム・フォールズや横田大輔、志賀理江子など当時頭角を表しつつあった若手写真家を紹介している。当時はデジタル化の進展によって翻って写真が「絵画的」になっていることがひとつの特徴とされていたが、いまは写真家が「社会」へコミットしようとしているのが特徴的だと太田は続ける。

ひどい時代ですから、5年前よりもアーティストたちの意識が変わってきている気がしています。特に若い人たち。BREXITやトランプ米大統領の誕生による社会の揺れ動きや、あちこちで起こるテロ事件、人種やジェンダーの問題を受け、写真を通じてアクティベートしないといけないという意識がどんどん強くなっているように思います」

こうした意識が強まっているのは、欧米の作家だけではない。しばしば日本の写真家は荒木経惟に代表される「私写真」のように私的でポエティックな方向に傾倒しがちだとされるが、近年は「自分と社会の接点を見つけながら作品をつくる人が現れている」と太田は語る。2011年の東日本大震災で作家たちは大きく変わったと思います。実際に現地へ行って撮影を行った人もいるし、ストレートなドキュメントではない表現に取り組んだ人もいますが、若手の人はますます問題意識が強まっているように感じます」

『IMA』Vol.4は「ミレニアル世代の“イット”フォトグラファーたち」をメイン特集のテーマに掲げ、世界各国から18人の写真家をピックアップしている。

今回SESSION 1に登壇するロシア出身の写真家、マリア・グルズデヴァ。プロジェクトのひとつ「Borders of Russia」は6万kmに及ぶロシアの国境を記録した作品だ。

マリアは国家の輪郭を浮かび上がらせる今作のような取り組みを通じ、人々が共有する記憶や土地とアイデンティティの問題を追求しているのだという。

trialog代表の若林恵が同号に寄稿した「シャッタード 散り散りになった私」では、ポスト・トゥルース時代に写真のリアリティと改めて向き合おうとする写真家たちの姿勢が論じられている。

『IMA』Vol.24では『Same Paper』のように次世代パブリッシャーの活動もピックアップされている。彼らは2017年に雑誌「Closing Ceremony Magazine」も創刊した。

新たなパブリッシャーと出版文化の勃興

こうした流れを受けてつくられた『IMA』vol.24には、国籍も手法もテーマも異なる多様な作家が取り上げられているのが印象的だ。中国や日本などアジア圏の作家が多く取り上げられていることからも想像できるとおり、ことミレニアル世代に関していえば、欧米が中心となった時代は終わりつつあるのかもしれない。事実、太田は次のように語っている。

パリやニューヨーク、デュッセルドルフなど、写真は欧米が強い時代もあったけれど、ここ数年は欧米よりももっと面白い地域が現れています。欧米では消費社会が成熟し切って大きなテーマが失われてしまった一方で、南アフリカや中国など色々な国から面白い人が多発的に現れてきています。特にここ数年、中国では新しい出版社や雑誌、書店が増え、いい作家もどんどん増えてきています」

今回のtrialogにも、写真家の小林健太や『Same Paper』ファウンダーのシャオペン・ユアンなど、アジア圏の作家が登壇予定だ。シャオペンは自身も写真家として活動しながらパブリッシャーとしての活動にも注目されているが、いまアジアでも出版文化の勢いは伸びているのだという。

日本は、写真家が展示より写真集に力を入れる傾向が昔からあったし、数年前からスモールパブリッシングのブームがあっていまは一段落していますが、中国やシンガポールはこれからますます盛り上がるでしょうね。Same Paper』のような出版社が生まれるのも時代の要請だと思いますし、こういったものが増えていくのは必然なんだろうなと」と太田は語る。

日本でも「THE TOKYO ART BOOK FAIR」のようなアートブックフェアは年々盛り上がりを増しているが、Shanghai Art Book Fair上海)や「Singapore Art Book FairシンガポールUNLIMITED EDITIONソウル)などアジア各地でも近年アートブックフェアは活況をみせている。Same Paper』に代表される新進気鋭のパブリッシャーの登場によって、今後もアジアで出版文化は盛り上がっていくに違いない。

ポストSNS時代の横断的なクリエイティブ

こうした若手アーティストやパブリッシャーの台頭の背景にはSNSの存在が大きく関わっていると太田は語っている。

これまでは賞への応募を通じて才能を見出されたり、雑誌で活躍することで見つけられたりしていたんですが、SNSの普及によって自分たちでどんどん発信ができる時代になった。面白い人がいたらフックアップしてもらえるフラットな時代です。ファッション写真の世界でも、奥山由之茂木モニカのような写真家は20代前半から活躍していますし、すごい勢いで若い世代が活躍し始めているのがいままでとは違う動きかなと感じます」

ファッション写真の領域に限らずいまでは多くのフォトグラファーがInstagramのようなSNSを通じて盛んに発信を行っている。なかには数万を超えるフォロワーを擁するフォトグラファーも少なくなく、個人が強大な発信力をもつことが珍しくない時代となった。

すごく変わったなと思うのは、IMA』を創刊したころはウェブに写真を載せたいというと嫌がる作家も半分くらいいたことです。でも、いまはそれを嫌がる人はほぼいません。この6〜7年で大きく様変わりしましたよね。美術館も昔は撮影禁止だったけれど、いまではむしろ写真を撮って拡散してもらいたがっている。ルールや常識は時代とともに大きく変わって行くのです」

こうした潮流のなかで、若手アーティストはこれまで以上に流動的に活動することが可能となった。今回のtrialogに登壇する写真家の平澤賢治が2016年にISSEY MIYAKE MENとコラボレーションを行ったように、ジャンルを越えた共創もより活性化しているといえるだろう。

trialogにも登壇する写真家・小林健太が自身の最初の写真体験は「プリクラ」だと語っていることが象徴するように、いま20〜30代のクリエイターは従来の「写真」アート」ファッション」といったカギ括弧つきのジャンルを融解させ、縦横無尽にクリエイティビティを発揮している。

若きクリエイターはどのような感性をもって世界や社会を捉え、どのように新たな作品を生み出してゆくのか。それを知ることこそが、クリエイティブの未来を考えるうえで最良のヒントになることは間違いないだろう。

7月28日開催のtrialog vol.2「ヴィジョナリー・ミレニアルズ」は、彼らのもつ感受性の秘密に迫り、いまだ名指されぬその感覚に輪郭を与えてゆく。フォトグラファー、パブリッシャー、ファッションデザイナーと次世代のクリエイティブを牽引するアーティストたちの「実験的三者対話」の行方を見届けるべく、ぜひ会場に足を運んでほしい。

ABOUTtrialogについて

WHAT’S “trialog”?

trialogとは、実験的な対話のプラットフォームです。

世の中を分断する「二項対立」から、未来をつくる「三者対話」へ。
trialogは異なる立場の三者が意見を交わす空間をつくり、
「本当に欲しい未来とは何か」を考えます。

代表を務めるのはblkswn コンテンツ・ディレクターの若林恵。
さらに、ゲームデザイナー/クリエイターの水口哲也が
共同企画者として参加します。ソニーのサポートのもと、
ジャンルや国境を超えた多彩なゲストを迎え入れたイベントを開催し、
対話のためのコミュニティ形成を目指してゆきます。