trialog Partnered with Sony
trialog Partnered with Sony
Partnered with Sony

VOL.3 SOUND, SPACE & UNIVERSE(S)

音と視覚のさまよえる宇宙

OPNという名の困惑を読み解け

9月13日(木)開催のtrialog vol.3に登壇するのは、電子音楽の鬼才「OPN」ことダニエル・ロパティン。マスカルチャーやメタルバンド、哲学者などありとあらゆるものを参照しながら自作について語るダニエルの真意は、その実謎に包まれている。OPNの音楽に魅了され、過去2度にわたるダニエルのインタビューでは彼の謎と対峙し大いに頭を悩ませたtrialog代表・若林恵が「OPN」という名の「困惑」を語る。

TEXT BY KEI WAKABAYASHI

第3回目となるtrialogのゲストは、電子音楽の鬼才、ワンオートリクス・ポイント・ネヴァー(OPN)こと、ダニエル・ロパティンだ。

1982年、アメリカ生まれ。だが、両親はともにロシア人だ。テクノ・エレクトロニカの名門レーベル「WARP」に移籍した、2013年作品『R Plus Seven』のときに一度、その次作『Garden of Delete』が発表されたときにさらにもう一度、インタビューを行ったことがある。二度目のときには、ブルックリンのスタジオを訪ねた。そのとき、近所に美味いロシア料理屋があると言って連れていってくれたレストランで食べたビーツの酢漬けが、驚くほど美味しかったことを覚えている。

ダニエルは基本は饒舌で、たくさん色んなことを話してくれるのだけれども、どこまでが本気でどこまでが冗談や諧謔や韜晦なのか、正直よくわからず困惑した。その席では、一番好きな映画は『ターミネーター2』で、最高の映画監督はジェームズ・キャメロンだと語っていたけれど、その一方で相当なシネフィルであるとも言われている。Garden of Delete』は、パンテラのPVをYouTubeで観まくるなかから生まれた、と言うのだけれども、リリース時に配布された資料には、哲学者のジュリア・クリステヴァの名前などが参照点として挙げられていた。

最新作『Age Of』のために、日本側のレーベルBeatinkが公式に行ったインタビューでは、ミハイル・バフチンのラブレー論なんかが言及されていて「ポリフォニー」なんていう、20年以上も前に大学で教わった文学理論上の概念を、いまとなって思い出さされた。そのくせ(いや、だから、なのか、アルバムのなかで、ダニエルは、ありきたりにも聴こえるカントリーソングみたいなものを、のうのうと歌っていたりするのだ。

インタビューをしていて、その語られる言葉にほんとうに頭を悩ませ、あれはどういう意味だったんだろう」と後々まで引きずるハメになった相手はそんなにいない。同じくらいにシニカルで、同じくらいにキレモノで、同じくらい厄介だった人物として、自分は、なぜかチリー・ゴンザレスを思い出す。

ダニエル・ロパティンの頭のなかで起きていることは、音楽そのものだけからでは測りしれないところがある。けれども確実に、ぼくらが見えていない何か、聴こえていない何かが聴こえているに違いない、という気配がある。音楽というものを、それを支えているフレームそのものからメタレベルで問題化し、その問題そのものをダイナミックに音像化するという荒技を、ロパティンほどデリケートにやってのけられる音楽家を他には知らない。けれども、その真意ときたら、やはりよくわからない。そして、音楽家を時を経るごとに刻々とその姿を変え、進化する。ゆえに、その思考の歩みに、どうしたって追いつけない(『Age Of』を最初に聴いたとき「うーん。なんだこれ?」となったのは、だからなのだろう。ぼくらはこれを聴きながら、前作からの3年の間に、彼のアタマのなかで起きたことを想像しなくてはならない

だからこそ、今回のtrialogに、彼とその盟友である音楽家・ヴィジュアルクリエイターのネイト・ボイスを迎えることができることを、心底嬉しく思っている。過去2回にわたってただひたすら自分を困惑させた、謎に満ちたトークに直接触れ、そこから、彼が自身の音楽に込めた真意を、参加者のみなさんにこそ、ぜひ読み解いてもらいたいからだ。それに今回は、強い味方もいる。大のOPNファンとして知られるSF作家の樋口恭介さんも対話に参加し、根ほり葉ほり、ダニエル・ロパティンの深層に迫っていただけるはずだ。さらに、trialogの前日の9月12日に日本でも開催される、オーディオヴィジュアルショー「Myriad」というプロジェクトについて、ダニエル、ネイト両氏によるプレゼンテーションも披露される。

時代を画する鬼才のことばと思考に生で触れる、世界的にも類例の少ない貴重な機会だ。まだ誰も開いたことのない「音楽」の新しい扉が、そこに開けているかもしれない。

WHAT’S “trialog”?

trialogとは、実験的な対話のプラットフォームです。

世の中を分断する「二項対立」から、未来をつくる「三者対話」へ。
trialogは異なる立場の三者が意見を交わす空間をつくり、
「ほんとうに欲しい未来はなにか?」を考えます。

代表を務めるのはblkswn コンテンツ・ディレクターの若林恵。
さらに、ゲームデザイナー/クリエイターの水口哲也が
共同企画者として参加します。ソニーのサポートのもと、
ジャンルや国境を超えた多彩なゲストを迎え入れたイベントを開催し、
対話のためのコミュニティ形成を目指してゆきます。